揃える方がいいことと、揃えなくてもいいこと
新婦人しんぶん2019年7月25日号に「あれ?学校おかしくない?」という特集が組まれています。「参観日に教室に入ると・・・姿勢から、手の挙げ方、机の上の教科書やノートの置き場、筆箱の中身まで指定されていました。
休み時間の過ごし方として、『休み時間の最初に次の授業の準備、授業の開始の3分前に座る』と書かれていました」と驚く保護者の声が紹介されています。ある学校では「○○13か条」が学校だよりに書かれていてびっくりしたとして、次のような例が示されています。
○○13か条
①授業の挨拶をそろえます。
②学習道具をそろえます。
③授業前に学習用具を机の上にそろえます。
④筆箱の中身をそろえます。
⑤ノートの書き方をそろえます。
⑥手の挙げ方をそろえます。
⑦返事をそろえます。
⑧丁寧なことばをそろえます。
⑨声の大きさをそろえます。
⑩発表するときの視線をそろえます。
⑪話を聞くときの視線をそろえます。
⑫整列したときに頭をそろえます。
⑬気をつけの姿勢のときに手足をそろえます。(指先をズボンの縫い目、足先はこぶし1個ぶん空ける)
これらは「○○スタンダード」と呼ばれるもので、ここ三重県でも数年前から多くの学校で見られるようになりました。
なぜスタンダードが広がったか
一つは子どもの指導がむずかしくなり、「こうすれば間違いない」というマニュアルを現場が求めるようになったことです。たしかにマニュアル通りにやっていればそれなりの効果はあるし、何よりも教師個人の責任が問われなくて済みます。
しかし四日市市内のあるベテラン先生は言います。「『手の挙げ方をそろえます』と言うマニュアル(学校によっては『手はまっすぐ耳の横にあげる』などというのもある)がありますが、おかしいと思います。
自信を持ってピンと手を上げている子、自信はないけどがんばって上げている子、当てないでほしいとおそるおそる上げている子、そんな子どもたちを見ながら授業するのが教師というものでしょう。それが見えなくなってしまいます。」
いっぽう「授業前に学習用具を机の上にそろえます」などは授業を成り立たせる上で必要なことです。きまりは必要最小限にして、あとは教師の独創性にまかせること。「黙って食べて、黙って行動、黙って掃除」などとそろえることがいいことだとは思えません。
東京大学大学院の勝野正章教授(学校教育経営)は次のように言っています。
「全国学力調査の結果を受け、学力向上を目指す自治体が、秋田など調査結果の上位県のスタンダードを参考に作成する例が目立ち、多くは内容が横並びになっている。教委や学校のスタンダードは教師が参考にする程度なら、教育の質の向上につながるかもしれない。だがマニュアルのように使われれば、指導が画一化する恐れがある。スタンダードに沿って学習規律を一律に求めるなら、発達障害や外国籍の子への配慮が欠けてしまう。
何より問題なのは、教師がスタンダード自体の内容がいいかどうかを吟味しなくなることだ。教師が自らの裁量が失われているのを自覚しなくなれば、行政の管理が進みかねない。」(2017年10月29日「朝日新聞」)
私たちのまわりを見回して、おかしいと思ったことには勇気を持って声をあげていく必要があるのではないでしょうか。 (Y)