大阪の教育改革とは?
大阪の教育改革について、月刊誌『世界』3月号に特集記事がありましたので、紹介します。三重県も似たり寄ったりの感じがしますが、『世界』の記事を簡単にまとめてみます。
大阪市を敬遠する教師
昨年(2021年5月17日)大阪市立木川南小学校の校長が松井市長あてに教育に関する提言書を送ったことがマスコミで話題になりました。直接の発端は、唐突なオンライン授業導入がきっかけだったようです。
最近の教員採用試験の倍率は、京都市、神戸市、大阪市の中で大阪市が最低で、また、大阪市を去って他府県や私立の学校へ移る人も出ているそうです。
教育行政の実態は?……すべて数値化して
競争を持ち込む
①大阪府の統一実力テスト「チャレンジテスト」
平均点を上げたいため、みんなのために欠席する子もいるそうです。(4割休んでいる学校もあると記事に書かれています。)
テストで比べられることによって、本来、ちゃんと学力をつけられるはずの子が自尊感情を低くして、学びに向かって行けません。
②学校選択制の導入
かつて、四日市市でも取り入れる気配がありましたが………
学校間競争、地域間競争が起き、家の近くの学校を選択しないで、公表される学力テ ストの点数で選択する家庭も。持ち込まれた分断により、地域のつながりが奪われていきます。
1校当たりの適正クラスは、12クラスから14クラスと決めた「大阪市学校活性化条例」によれば、選択される数が少ない学校は、統廃合の対象になっていきます。行政の目的もここにあるのかもしれません。
③「ステップアップ」研修って何?
すてきな名前のこの研修、実は、「指導が不適切」と校長が決めた教員を教育委員会が判定し、指導改善研修を受講させるというもの。2004年から今までに、55人が対象になり、復帰が10人、免職6人、休職1人、自主退職38人。
④37歳までに「主務教諭」に登用されなければ、以降の昇級が全くなくなる、また、新しい人事評価を導入し、最低ランクの教員を「免職」にする制度ができました。
⑤3年連続の定員割れの府立高校は廃校にする。
「競争」でなく「協働」の社会を
冒頭に書きました松井市長あての提言書は、すばらしい内容ですが、最後の方で下記のようにまとめています。
人の能力を数字で表すのであれば、2万項目くらい必要になるのではないでしょうか。あらゆるものを数値化して評価することで、人と人との信頼や信用をズタズタにし、温かいつながりを奪うだけです。
間違いなく教職員、学校は疲弊していますし、教育の質は、低下しています。だれもが一生懸命働き、人の役に立って、幸せな人生を送りたいと願っています。その当たり前の願いを育み、自己実現できるよう支援していくのが学校でなければなりません。
「競争」でなく「協働」の社会でなければ、持続可能な社会になりません。
根本的な教育の在り方、いや政治、社会の在り方を見直し、子どもたちの未来に明るい光を見出したいと切に願います。
終わりに
大阪の教育行政を仕切っているのはご承知のように松井市長(日本維新の会代表)であり、吉村知事(同会副代表)です。
大阪の教育は維新の会が目指す教育の見本と言っていいでしょう。維新の会は大阪に持ち込んだ「教育改革」(実は見てきたように教育破壊!)を全国展開しようとしています。
この原稿が皆さんの目に触れるころには参院選挙は終わっているかもしれませんが、日本の教育がこれ以上間違った方向に行かないことを筆者は願うものです。
( 四日市 Y&A )