みえ教育ネットワーク

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中日新聞が日曜日ごとに掲載していた「全国学力テスト10年」が完結

  教室で「田植え」だって?!
   汗の 香川、涙の 愛媛 
      二度も同じ過ちを犯したらあかん

  

  中日新聞が日曜日ごとに掲載していた「全国学力テスト10年」が完結しました。最終日は「番外編」。安倍首相が2006年に著した「美しい国へ」で述べたとおりに「学力テスト体制」が着々と作られてきたことをふり返ります。見出しに書いた「田植え」はおよそ半世紀前の「全国学力テスト」で起きたとんでもない弊害を語る言葉です。
     以下2017年3月12日付け中日新聞記事を引用します。

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国学力テスト10年 番外編 「美しい国へ」?
         人を育てる教育に戻して
 誰が言い出したのか、今となっては知るよしもない。先生たちは「田植え」とひそひそ話で言い合ったそうだ。少し前かがみで席を回り、生徒の答案を指で押さえる姿が、そう見えたからだという。

 「わたしらの先生はテストの時にぐるぐる回ってきて、間違っていたら、黙って指で押さえて教えてくれた」

 およそ半世紀前の1961〜64年、文部省(当時)主導で行われた「全国学力テスト」。全国一位を競った香川県愛媛県で起きた問題を、大学教授らが調べた報告書「『学テ教育体制』の実態と問題」には、当時の出来事が克明に記録されている。
 
  モラルなき“田植え”  
  愛媛県の事例では− 
 答えを書いた紙片を見えるようにヒラヒラさせて教室を歩き回る先生。「今度は(平均点を)86点ぐらいにしましょうか」と聞く教師に「それでは高すぎて困る。78点ぐらいにしておいてくれ」と応じる校長。

 東京の週刊誌記者に「不正ではないか」と“田植え”について問われ、「善意の行為は不正とは考えない」と答える教育長に、「先生も子どもも懸命なのだから“善意の勇み足”でしょう」と言い添える自民党の県連幹事長−。


  狸(たぬき)校長や赤シャツ教頭が出てくる漱石の「坊っちゃん」の舞台だからでもないだろうが、想像を超える人物像で笑わせてくれる。

 一方の香川県では、毎日の授業時間帯の前後一時間ずつ、学テ対策のプリントを解かせる対策漬けに。同県の教師らが書いた「学テ日本一物語」では、学テが近づくと、一日8〜9時間のテスト準備の授業に加えて土日も登校、宿題も山のように課された実態が、生徒の声とともにつづられている。

 「学テあって教育なし」と言われた当時を知る香川県内の元教師大林浅吉さん(94)は「汗の香川、涙の愛媛と例えられた。二度も同じ過ちを犯したらあかん」と平成の学テの行方を心配する。
 
 半世紀前の失敗を省みず、なぜ再び学テが登場してきたのか。もとをたどると、安倍晋三首相が2006年に著した「美しい国へ」の一節に行き当たる。そこで首相は「喫緊の課題は学力の向上である」と訴え、こう続ける。

   「全国的な学力調査を実施、その結果を公表するようにするべきではないか」
 さらに、「結果が悪い学校には支援措置を講じ、それでも改善が見られない場合は、教員の入れ替えなどを強制的におこなえるようにすべきだろう」。

 そこには、点数だけで教師たちを評価し、強権で締め付けようとする意図が赤裸々だ。「この学力テストには、私学も参加させる。そうすれば、保護者に学校選択の指標を提供できる」という言葉からは、まるで教育の基準が点数にしかないようにさえ読み取れる。

 そして、首相がもくろんだ通り、教員も学校も教育委員会も学テの結果に戦々恐々とし、平均点を上げるために必死になっている。

 「美しい国へ」には、その先がある。

 「郷土愛をはぐくむことが必要だ。国にたいする帰属意識は、その延長線上で醸成されるのではないだろうか」

 森友学園」生む流れ
 著書発刊の5カ月後に教育基本法が改正され、愛国心条項が盛り込まれ、18年度以降に小中学校で道徳が教科化されることも決まった。

 今、国会で焦点になっている大阪市の学校法人森友学園の問題も、この流れと無縁とは思えない。過去の失敗に学ぼうともしない一政治家の、短絡的な点数主義と、特定の思想教育へのこだわりが教育現場に深刻な混乱をもたらしているとすれば、空恐ろしい、としか言いようがない。

 報告書に描かれた半世紀前の愛媛県には、こんなシーンがあった。

 「母親大会で、ある母親が『うちの子供は文部省テストの日、先生が休みなさいと言った。いくら成績の悪い子でもひどいではないか』と発言した。

 すると担任の女教師が立ち、私たちもそんなことはしたくありませんけれども、文部省テストが近づくと校長室へ担任が呼ばれ、『平均点を必ず上げてもらいたい。そのためには多少の犠牲もやむを得ない』と厳しい口調でいわれ、その日から各クラスで猛烈な準備が始まり、何とかして平均点を上げたいと、つい子どものことは頭からはなれて、成績の悪い子は、いなくなってくれればよいという気持ちになるのです、と発言した」

 教育は国家百年の計と言われる。一朝一夕に学力が伸びるはずはないし、そもそも学力とは何なのか。点数による序列化でも、思想教育がその中心でもないはずだ。教室で先生たちが、一人一人の生徒と、その能力に応じた向き合い方ができる、そんな教育現場に戻してほしい。
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 以上引用終わり。  ※文中の文字の装飾は、ブログ編集者の意図によります。

 このシリーズを担当した浅井弘美記者(中日新聞大津支局)のお話を7月2日(日)に四日市で聞くことが出来ます。
 
   1:30〜四日市勤労者市民交流センター
。詳しくは今後のブログをご覧下さい。