みえ教育ネットワーク

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みえ教職員懇話会主催の講演会の報告です

 安倍流教育改革で学校はどうなる
 6月15日(土)アスト津で、みえ教職員懇話会主催の講演会「安倍流教育改革で学校はどうなる」が開催されました。講演したのは中嶋哲彦さん名古屋大学大学院教授/全国大学高専教職員組合委員長)。「参院選後に待っているこの国の教育の危機に対し、私たちはいま何ができるのか、いっしょに考えませんか」(チラシより)という呼びかけに県内から集まった参加者で、会場はほぼいっぱい。中嶋さんは自民党教育再生本部の「中間とりまとめ」をもとに、安倍さんがしようとしていることを、解明しました。熱心にメモを取る参加者の姿が目立ちました。以下お話の概略をレジュメにそって紹介します。

(1) 6・3・3・4制の解体
「能力・適性」に応じた複線型の学校制度への転換
戦後教育改革によって作られた単線型の六三三四制を、自民党は眼の敵にしてきた。しかし、この学校制度には個人の成長発達を保障するとともに、社会を発展させる上できわめて重要な意義がある。
〇義務教育(=権利としての教育の無差別平等保障)の年限を9年に延長して、前期中等教育まで無償
で受けられるようにした
〇学校制度を単線化し、国民が共有する知識・技術・文化の質や量を飛躍的に向上させた
中等教育や高等教育の特権性を排し、すべての国民に高度な知にアクセスする機会を開いた

「中間取りまとめ」は、
・学校体系の柔軟化、
飛び級
・中学校での単位制や再履修制度、
・義務教育開始年齢の引き下げ、
・高校での達成度試験、
などの導入により戦前のような複線型学校体系に逆戻りさせ、「能力・適性」によって区分された教育制度(進級スピード・学習内容・到達目標の多様化)に変えてしまおうと言うのである。これはグローバリゼーション対応の教育の効率化を目指しているのかもしれないが、機会の不平等を進めれば資本主義の存立基盤である社会の基本的平等性さえ切り崩しかねない。

(2) 意のままの教員養成、教員の地位引き下げ・管理強化
 今日、教員養成のための教師教育は大学・短大が、教員採用は教育委員会がそれぞれ責任を負っている。行政が教師を養成するのではなく、大学・短大が学問の自由の下で主体的に教師教育を行う仕組みである。
 ところが、「中間取りまとめ」は、大学卒業・大学院終了後、1〜2年のインターンシップ修了を要件として教育委員会が免許状を授与し、正式採用する仕組みを打ち出している。これは教員志願者に2〜3年もの期間仮採用・仮免許という不安定を強いるもので、教職志望者の減少や教員の質低下を招きかねない。

(3) 「愛国心」教育のための教科書づくり
 学習指導要領では子ども・若者に学習させるべき事項を詳細に記述し、さらに教科書検定基準には教科書に記載すべき事項(事件や人物)を具体的に明記することで、「『伝統と文化を尊重し、それらを育んできたわが国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し国際社会の平和と発展に貢献する態度を養う』(教育基本法)ための教科書」を作らせると言う。また、近隣諸国条項も「見直す」と言う。これは「愛国心」教育を本格的始動させ、国民の思想良心や知と文化を支配しようとする企てにほかならず、諸外国との摩擦もさらに拡大させかねない。

(4) 大学の種別化・国策遂行機関化と、大学への管理強化
 大学を「世界トップレベルの大学」と「地域密着型大学」に種別化し、前者は国策大学として育成・強化し、後者は職業技術訓練と就労支援を安上がりに行う施設に変えていくと言う。また、大学の教育研究資源を大企業が営利目的で利用しやすくすると言う。さらに、大学を9月入学にし、高校卒業後から大学入学までの期間(ギャップターム)に自衛隊等での体験活動を必修化・単位化し、その評価は就職活動時にも利用すると言う。これでは大学における自由闊達な教育研究活動や学生の創造的な学びを衰退させかねない。

(5) 強権的教育行政
 「責任体制確立」との名目で、各学校の教職員組織の官僚制的編成、教員への管理強化と教科教育マシン化(「教育専門職」)、教育長による教育行政を提言し、同時に文部科学大臣の権限強化も主張している。このうち教育委員会制度改革は今後速いペースで進展する可能性があるので特に注意が必要だろう。

<参加者感想>
 安倍さんが目指すのは、「少数エリート主義」。つまり早くから選別して、教育にお金をかけるのは一部のエリートだけにし、その他大勢には金はかけない。優秀なエリートを育てることで経済を再生し、「日本をとりもどす」。しかしこれはうまくはいかないだろう、なぜなら少数エリート以外は低賃金労働者になるしかなく、これでは国内の購買力が増えないからだ、とのお話が印象に残りました。将来的には常時30万人ぐらいの留学生を日本の大学に入れて、優秀な頭脳を日本経済のために活用するという。教育を経済成長の手段としか考えないのは悲しいことです。  (Rさん 女性)


 現場の教員からみれば、教育委員会はどちらかというと、歓迎されない存在です。また何かことが起こったとき「教育委員会が悪い、なくしてしまえ」と、しょっちゅう批判されている。しかし、「行政からの独立を制度的に保障しているのが教育委員会犬山市大阪市では、教育委員会制度があったから、行政の意向を跳ね返すことができた」と中嶋先生は自らの体験も踏まえて強調されました。この制度を変えて、為政者の思い通りに教育現場を支配するたくらみには抵抗しなければならないと思いました。  (Kさん 男性)