みえ教育ネットワーク

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教育はワンチームで行うもの ~教員評価制度~

県教委交渉報告 その3 教職員評価・30人学級・学力テスト

教育はワンチームで行うもの ~教員評価制度~

 

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 人事評価制度がはじまって4年経ちました。「意欲・能力・組織力の向上が目的。絶対評価なので教職員間に競争を持ち込むものではない。公正・公平な評価が行われるように評価者研修に努めている。E評価はよっぽどのことで、普通はつかない。勤勉手当てはAB同じ、昇給はABC同じ、現状を維持したい」と県教委は説明しますが、油断すればこれが教員管理に悪用されるのではないかと私たちは危惧します。
 
 教育とは教師集団と保護者が力を合わせて取り組むもの。若い先生を敢えてリーダーにして、それをベテランが支えるなど、ワンチームの力が発揮できる工夫を現場はしている。ABが固定化しないように工夫しているというが、本来この制度は教育とは相容れない制度だ。国の方針である以上やむを得ない面は理解するが、今より悪くなるようなことはあってはならないと組合は訴えました。

 

25人下限の撤廃を~30人学級実現~
 私たちは25人下限の撤廃を求め続けてきましたが、撤廃はむずかしいとの回答を今年も県教委はくり返しました。

 三重県の財政力からしてむずかしいことではない。下限があることで30人学級にならない学校ができるという「不平等」が何よりも問題だ。6年生まで少人数学級を拡大している県もある。三重県も拡大の方向で取り組むべきだ。「お金がない」で済まさないでほしいと訴えました。

 信念なのか、それとも役目なのか? 
      ~学力テスト・スタディチェック~

 学力テスト・スタディチェックに関する問題では、県教委学力向上プロジェクトチームとの話し合いをしました。

 私たちは「学調」には以下のような大きな問題があり、即時中止すべきであると考えています。

(1)児童生徒の学力をはかること自体は必要だが、教科が限られていることや、文科省自体が「学力の一部をはかるもの」と述べているように、学力全般をはかるものではない。それなら悉皆調査の必要も毎年実施する必要もなく、何年かに一度、抽出方式で行うだけで十分である。

(2)調査結果が学校に届くのが8月、個票が児童・生徒に返却されるのが9月である。解答用紙も戻らず、問題用紙も保管されているはずもない状態で、○か×だけの「個人票」だけをもとに児童・生徒・保護者に具体的な「課題」や「対策」などが考えられるはずがない。また、一部の学校も教委の指示で、実施後すぐに対象学年の一部の解答をコピーし、採点し、類型別の集計を報告しているが、実際にはその結果を担任や教科担当が分析することなどなく、授業改善にも個別指導にも役立たない無駄な作業となっている。

(3)本来の目的とされているものとは全く違う「順位競争」が年々激化している。とりわけ結果の公表が競争を煽り、教育そのものを大きく歪めている。その結果として、不正行為が行われたり、「学調対策」ともいうべき授業が横行したりしている。

(4)「学調」の結果を意識してか、「授業スタンダード」が横行している。たとえば校内研修で「授業開始時に『目当て(目標)』を、終了時に『まとめ(ふりかえり)』を提示させることを徹底させることなどである。しかし、いきすぎた徹底が「手段」が「目的」に代わってしまっているような本末転倒の事態も多く見受けられる。授業者が児童生徒の興味関心に合わせた創造的な授業の創造の障害になっている場合もある。

2.三重県が実施している「みえスタディ・チェック」についても、私たちは以下のようなさらに大きな問題があると考えます。

(1)問題の中身は、明らかに「学調」の正答率アップのためだけを目的としており、普段の授業で継続的に取り組まなくても事前に似たような問題さえ繰り返しておけば正答率が上がるような問題が目立つ。

(2)「学力向上」「実生活への活用」を目的とするなら国語・算数(数学)に限定するのはおかしい。また、小学校4・5年生と中学校1・2年生を対象としているが、「学調」対策でないというなら明らかに矛盾している。

(3)問題の採点・類型別の報告など、非常に手間のかかる作業をすべて現場にまかせているが、作文形式の解答については、採点者によって〇×、さらに類型別の判定が異なることが多く、集計そのものがほとんど無意味なものとなっている。これは「学調」以上に無責任であり、教師に無駄な労力を押し付けるものとなっている。また、類型別の報告は、採点者が授業者でなければ、「学調」同様、実際の授業改善には全く反映されないし、現実にそうなっている。

 これらの指摘に対し県教委は、学調やスタディチェックの実施により「子どもたちの『つまずき』に気づき、克服の手立てを考える」「可能性や生きる力をはぐくむ」「やればできるという思いを持たせ自己肯定感を高める」など抽象的な回答に終始しました。

 組合は「スタディチェックの出題形式が全国学力テストの形式と酷似しているのはなぜか?まさに学力テスト対策ではないか?」「違うというなら、なぜ問題の形式を同じにする必要があるのか?」と迫りましたが、まともな回答は得られませんでした。

                                   以上

1時間でいいから空き時間がほしい

県教委交渉報告 その2 長時間過密労働
  1時間でいいから空き時間がほしい
     ~11月14日県教委交渉で訴える~

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 勤務時間問題では8項目にわたる要求に対し、「今年はじめて17校にスクールサポートスタッフを配置し、教職員の負担軽減を図った」など前進面は見られるものの、ほとんどは従来の回答の域を出るものではありませんでした。組合員が現場の実態を切々と訴えました。

Oさん
 8月から9月に県が行った「働き方改革」のアンケートに私は教員の授業時間を削減することを1番に書きました。これしかないと思っています。

 現在1年生を担任していますが、子どもが帰るまで、休むことはできません。3時に子どもたちが帰ってからトイレに行くような毎日です。朝も1時間前に出勤して、子どもたちを迎えています。12時間労働です。

 空き時間は2時間ありますが、9月は音楽の先生がお休みだったので、運動会の練習に取り組みながら、空き時間0で1ヶ月を過ごしました。
 空き時間がないのは私だけではありません。手のかかる子どものいるクラスがあると、そのクラスに入らないといけなくなるので、空き時間がなくなるということはよくあります。

 若い先生でも疲れると言っているのに、私のような年配の教員は、その日の疲れを引きずったままで、もうクタクタです。十分な教材研究をする時間もなく、子どもの前に立つ事になり、子どもたちに申し訳ないと思っています。ゆとりをもって子どもに向き合うこともできません。

 空き時間が毎日1時間でもあれば、宿題を見て、教材研究ができます。そうしたら放課後にしなければいけない仕事が減ります。少しでも早く帰ることで、その日の疲れをその日のうちに取ることができるのです。

Nさん
 6時半に家を出て、7時から7時まで12時間働いています。病休の代替の先生が見つからず、4月は一人減でスタート。1学期途中で退職者が出てもう一人減。減った先生の分は残された教員でカバーするので、朝早くから夜遅くまで働き、疲れ切っています。なぜ補充してくれないのか。週8時間の非常勤がやっと配置されたが、TTしか持てない。手のかかる子が多く、空き時間は全くなし。 

 定時退校デーなど設定されても、定時に帰れるわけがありません。
「講師登録者数が激減している、景気の影響か」、と教委は言いますが、教員の過重労働が広く世間に知られるようになったことや、臨時教員の待遇の悪さが原因だと思います。待遇をよくしないと登録者は増えないと思います。

 道徳の問題については、年度が開けて忙しい時期に年間計画ならまだしも、授業の細案の提出をしても意味がないと思います。年度初めに一年間全ての授業の細案など考える余裕がありませんし、道徳の内容は児童生徒の課題に応じて考えるべきものですから、年度初めに考えても児童生徒の実態をつかむ時期に考えたものでは実態が変わってくるので意味がありません。 

「道徳の授業案は必要ありません」と県教委 
 Nさんの訴えに対し県教委は「年間指導計画は法的に必要だが、それ以外は県教委としては求めていません」と回答。年度初めの忙しいときに細案まで求めるのは市教委だと言うことがわかりました。無駄なものに労力をかけさせるという事はやめてほしいものです。

変形労働時間制には慎重 
 今、国会で問題になっている一年間を通じた変形労働時間についても質問しました。この制度になれば一日の勤務時間が10時間まで許される。6時すぎまで職員会議をやってもよいことになる。それからやっと明日の準備、労働強化だと訴える私たちに対し、県教委は「この制度が労働時間を減らすというものではないと承知している。労働強化につながるものであってはならない」と慎重な考えであることを表明しました。

土曜授業への反省なし
 土曜授業について、かつて県教委は年間8回を推奨し、市町によっては11回と言うところもあったが、今では3回ぐらいに減っている。0回の市もある。
県教委はどう総括しているのかとの問いに、「年8回はかつて18市町、今では2市のみ」と県教委も認めましたが、「県は提案したが押しつけはしていない」と無責任な態度。「きちんと総括すべきだ」と重ねて求めました。

臨時教職員の願いが実る

2019県教委交渉報告 その1 臨時教職員の待遇改善
      臨時教職員の願いが実る
       ~11月14日、県教委との交渉~

 2019年11月14日(木)午後2時から、みえ教育ネットワーク教職員ユニオンと三重県教育委員会との地公法55条にもとづく団体交渉が行われました。交渉はあらかじめ提出してあった「2019年度要求書」に沿って行われました。

 ユニオンは現場の実態をリアルに語り、臨時教員の待遇改善や、教職員の労働条件改善を、心をこめて訴えました。今年2年目のH教職員課長は、従来あった紋切り型の回答とは違って現場の思いを理解しようとする姿勢が見られ、気持ちの良い交渉となりました。 まずは臨時教員の待遇改善の部分について報告します。

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 空白の一日はなくします

 臨時教員問題では、期限付講師の割合を減らし正規率を増やすこと、期限付講師と臨時的任用講師の賃金格差をなくすこと、3月31日の空白日をなくすこと、年休を継続すること、退職金60%支給をやめること、次年度の任用を保障すること・・・など15項目の要求を示しました。

 特に「空白の一日」は臨時教員問題を考える会が20年も前から要求し続けてきたことです。これについて学校教育課長は「3月31日の空白は解消します」と回答。
「いつから?」との問いに「令和3年3月31日から」と明言。昨年の交渉で「会計年度任用職員の制度設計の中で見直していく」との回答を得ていましたが、ついに実現したのです。

 これにより臨時教員の年休繰り越しが可能となり、ボーナスや退職手当もアップします。長年の要求が実りうれしい瞬間でした。
 
 また期限付講師と臨時的任用講師の格差解消も「前向きに検討する」「12月中には結果が出る」との回答でした。
 いっぽう、講師と正規の格差については「職務が違うから同一にはできない」との回答。それに対し、以下のように訴えました。

組合 
A組の担任は正規、B組の担任は講師、この二人に職務の違いはない。現場では全く同じ仕事を遂行している。

県教委 
法令上講師は主任ができないことになっている。

組合 
法令上はそうかも知れないが、実際には「あんたは主任はできやんけど、主任並みの仕事をしてな」と言われることはよくある。愛知県は教諭と同じ2級格付けをしているから給料がいい。このままでは三重から愛知へ講師が流出してしまう。愛知でできたのだから三重でも是非実現してほしい。

 その他、臨時教員問題では会計年度職員への移行の中で非常勤講師の単価が下がることが懸念されていましたが、県教委は「単価は今よりも下がらない。下げたら人が集まらないから。」と明言しました。退職手当60%支給については「定年ではないし、整理退職でもないから60%しか支給できない」との従来の回答をくり返すばかり。これに対し「60%支給は自己都合退職の時だけだ。講師が任期いっぱいつとめて辞めるときに自己都合はないだろう。100%支給を是非望みたい」と訴えました。
 
 その他の回答で主なものは以下の通り。
◎正規率のアップ→すべて正規にとはいかないが、右肩上がりになるよう採用計画を立てたい
◎非常勤講師の年度初めの引き継ぎ→研修時間として設けた4時間以内でOK
◎臨時の事務補助員、学校栄養補助員などの昇給→総務省の指針に沿って昇給を考えている
◎臨時の事務補助員、学校栄養補助員などの病休→付与の方向で見直す
×講師経験を採用基準に反映せよ→地公法との関係で講師だけを優遇は難しい
×講師の健康診断→現行のまま
×再任用を定数外に→再任用が増えてきたので難しい
×非常勤講師を特別選考Ⅱに含めよ→難しい
×非常勤講師の月給制→授業時間数が月により変動するので難しい

          次号では「長時間過密労働の解消」についてお知らせします。

1日9時間の労働!あたしゃ体が壊れてしまうよ。

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 朝から休憩なしで9時間労働(実質10時間)、保育園のお迎えに間にも合わない。その日の疲れが明日まで残る 夏休みまでに病気になっちゃうよ。しかも夏休みだって休めない・・

みんな、知ってる?このままだと大変!!

 「1年単位の変形労働時間制」を可能にする法案が臨時国会に提出されようとしています。これに関しみえ教育ネットワーク運営委員会は次のアピールを発表しました。

 

<アピール>

「1年単位の変形労働時間制」の導入は、教職員の健康を破壊します

           2019年10月 みえ教育ネットワーク運営委員会

 教員の長時間過密労働を巡り、今度の臨時国会において、政府は、公立学校に対して「1年単位の変形労働時間制」を適用可能とする法案を準備しています。これは、法と条例により、「8時間労働制」をなし崩しにしようとするものです。

端的に言えば、「教員の異常なまでの過重労働と、時間外労働賃金不払いの実態を、覆い隠すための仕組みである。」ということです。

 

 「8時間労働制」は、「労働による疲れは、その日のうちの回復しなければならない」「人間らしく働きたい」という要求から、世界の労働者が長年の闘いの中で、その命と健康を守るために勝ち取ってきた、非常に大切な原則です。

それに反し、教員の平均実労働時間は1日11時間を超えています。柴山前文科大臣自身が、「1年単位の変形労働時間制の導入により、教師の業務や勤務が縮減するわけではない。」と認めています。

 労基法には「1年単位の変形労働時間制」導入には労使協定の締結が必要と定めています。ところが政府は、これほど問題のある制度を地方自治体の条例改正によって実施させようとしているのです。労働者保護の観点からあってはならないことです。

 

 この制度が導入されると、例えば次のような大きな問題が生じてきます。

〇日々の長時間労働が1時間分覆い隠され、隠れた残業が増えるだけで、教員の健康はますます蝕まれます。

○労働時間を1時間延長すれば、45分の休憩時間は労基法上60分となり、1時間15分の拘束時間の延長となります。つまり、午後6時ごろまでの勤務が「当然のこと」となるのです。

〇平日の会議や出張も、午後6時前までになるおそれがあります。また、保育時間内に、子どもを迎えに行くこともできなくなります。

〇夏季休業中等は「閑散期」だと位置付けて、「繁忙期」の過重労働分を夏季休業中に休日を増やすこと等で対応するとしていますが、現在の教員に「閑散期」などありません。研修会・出張・事務作業・部活指導・体育祭準備等、夏季休業中さえ時間外労働している実態を無視したものです。年休さえ満足に行使できずに使い残しているのに、夏季休業中にこれ以上休日を増やしてどうしろというのでしょうか。

〇わずか4%の教職調整額は、1971年当時の残業の平均的時間数(月8時間程度) に見合うものとした額で、現在の異常な長時間労働からすれば、不当な賃金不払いが常態化したものですが、何ら改善されるものではありません。

 

 以上の理由から、みえ教育ネットワーク運営委員会は、「1年単位の変形労働時間制」の導入には断固として反対であることを表明します。

 

【解説】

 この問題は、昨年11月13日の 中央教育審議会 「学校における働き方改革特別部会」(座長:小川正人放送大学教養学部教授)が、1年単位の変形労働時間制の導入検討を軸とする答申の骨子案を示したことから始まっています。(2007年にも議論されたが、批判が噴出し、見送られた。)この時、部会内では、過重労働が酷くなることを懸念して、「疲労を一日一日回復することが大事」、「時間外労働に歯止めがかかりにくくなる」などの意見も出ていました。

 

しかし、今年の1月11日、特別部会は、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申案)」を取りまとめました。

 

 すでに、2005年から、三重大学付属小学校などの一部の国立大学付属小学校では、平日の勤務時間を延ばして、その代わりに夏休み期間は土日以外に休日を13~14日間とることになりました。それに対し、現場からは、長時間労働を追認するだけだという声が出ています。しかし、公立学校での実施には、地方公務員法の改正などが必要なので、この間に文科省が準備を進めてきたのです。

 

 11月には、臨時国会で法案が審議・可決される恐れが強まっています。全教・全労連は、10月16日、18日には「1年単位の変形労働時間制」導入を許さない緊急国会行動を行います。また、野党だけでなく、与党議員の一部には教員の長時間労働に強い懸念を抱いている人もいると聞く中、国会議員へのFAX要請を行います。教員の健康と人間らしい生活を守れるかどうか、大変危険な情勢です。みえ教育ネットでは国会議員への要請ハガキ運動に取り組みます。  (駒)

そろえるのはいいことか? 

揃える方がいいことと、揃えなくてもいいこと

 

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 新婦人しんぶん2019年7月25日号に「あれ?学校おかしくない?」という特集が組まれています。「参観日に教室に入ると・・・姿勢から、手の挙げ方、机の上の教科書やノートの置き場、筆箱の中身まで指定されていました。

 

 休み時間の過ごし方として、『休み時間の最初に次の授業の準備、授業の開始の3分前に座る』と書かれていました」と驚く保護者の声が紹介されています。ある学校では「○○13か条」が学校だよりに書かれていてびっくりしたとして、次のような例が示されています。

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○○13か条

①授業の挨拶をそろえます。

②学習道具をそろえます。

③授業前に学習用具を机の上にそろえます。

④筆箱の中身をそろえます。

⑤ノートの書き方をそろえます。

⑥手の挙げ方をそろえます。

⑦返事をそろえます。

⑧丁寧なことばをそろえます。

⑨声の大きさをそろえます。

⑩発表するときの視線をそろえます。

⑪話を聞くときの視線をそろえます。

⑫整列したときに頭をそろえます。

⑬気をつけの姿勢のときに手足をそろえます。(指先をズボンの縫い目、足先はこぶし1個ぶん空ける)

 

 これらは「○○スタンダード」と呼ばれるもので、ここ三重県でも数年前から多くの学校で見られるようになりました。

 

 なぜスタンダードが広がったか

 一つは子どもの指導がむずかしくなり、「こうすれば間違いない」というマニュアルを現場が求めるようになったことです。たしかにマニュアル通りにやっていればそれなりの効果はあるし、何よりも教師個人の責任が問われなくて済みます。

 

 しかし四日市市内のあるベテラン先生は言います。「『手の挙げ方をそろえます』と言うマニュアル(学校によっては『手はまっすぐ耳の横にあげる』などというのもある)がありますが、おかしいと思います。

 

 自信を持ってピンと手を上げている子、自信はないけどがんばって上げている子、当てないでほしいとおそるおそる上げている子、そんな子どもたちを見ながら授業するのが教師というものでしょう。それが見えなくなってしまいます。」

 

いっぽう「授業前に学習用具を机の上にそろえます」などは授業を成り立たせる上で必要なことです。きまりは必要最小限にして、あとは教師の独創性にまかせること。「黙って食べて、黙って行動、黙って掃除」などとそろえることがいいことだとは思えません。

 

  東京大学大学院の勝野正章教授(学校教育経営)は次のように言っています。

 「全国学力調査の結果を受け、学力向上を目指す自治体が、秋田など調査結果の上位県のスタンダードを参考に作成する例が目立ち、多くは内容が横並びになっている。教委や学校のスタンダードは教師が参考にする程度なら、教育の質の向上につながるかもしれない。だがマニュアルのように使われれば、指導が画一化する恐れがある。スタンダードに沿って学習規律を一律に求めるなら、発達障害や外国籍の子への配慮が欠けてしまう。

 何より問題なのは、教師がスタンダード自体の内容がいいかどうかを吟味しなくなることだ。教師が自らの裁量が失われているのを自覚しなくなれば、行政の管理が進みかねない。」(2017年10月29日「朝日新聞」)

 

 私たちのまわりを見回して、おかしいと思ったことには勇気を持って声をあげていく必要があるのではないでしょうか。  (Y)

自主教材を使ったら「法令違反」?

「教科書を全部教えることは法律で定められている。教科書教材を使うように。これは業務命令です。」

自主教材を使ったら「法令違反」?

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 教師生活40年目のこの6月に校長から初めて「業務命令」を受けました。学校公開日にたまたま私の授業(中1国語)で、「空中ブランコ乗りのキキ」という作品(もうずっと1年生の最初の「小説」として実践して来た他の教科書会社の教材)を扱っていたところ、あとから教頭を通じて「保護者から『あの教師は何で教科書をやらんのや。こんなんで教科書終わるんか』といった文句が出た」ということを知らされました。

 その他にもまだいろいろ注意事項?がありましたが、生徒の反応や教師の指示などには一切ふれず、「とにかく教科書教材をやれ」という指示でした。私がいくら「すでに教科書教材はいくつも扱ったし、この作品は他の教科書会社の教材で、例年とても生徒の反応がいい」などと説明しても耳を貸しませんでした。

 その後、夏休みの感想文を書くための自主教材を準備していたところ、それを見とがめたらしく、教頭と校長が私を校長室に呼び、「教科書を全部教えることは法律で定められている。教科書教材を使うように。これは業務命令」「従わないなら教委に報告し視察に来てもらう」と言ってきました。

「まあ、脅しだな。視察してもらうのもいいかも」と思いましたが、T2(二人で同じ授業を指導する、いわば補佐役)の若い先生に見本を見せていく必要もあり、冷静に反論してやりとりした挙句、「教科書教材をやったうえで発展教材として自主教材を使うのはOK」ということで決着しました。

 

 それにしても、少なくとも国語で教科書の教材(資料教材や読書教材など大変な量です)を全部教えている教師など聞いたことがありませんし、そんなことを定めた「法令」らしきものと言えばせいぜい「学習指導要領」でしょうが、法的拘束力は別として、国語の教科書教材を全部教えろ、とは言っていないはずです。大体、教科書会社によって教材が違うのですから。

 

生徒に力をつけることこそ教育

 今、「○○スタンダード」が教育界でもてはやされ(逆にまともな教師や研究者からは批判の的になって)いますが、三重県のほとんどの小中学校の教室には「めあて」「ふりかえり」の表示が黒板にマグネットで張り付けられています。校内研修でこの実践報告と検討を行うところもあります。

 私の授業では「どのジャンルの教材でどんな力をつけるのか」「そのために授業で具体的にどんなことを行うのか」をその教材の最初に時間をかけて説明しています。ですからいちいち授業ごとに「めあて」を板書することはしないし、生徒の意見がたくさん出て時間が足りなくなるような場合(本来それが望ましいのですが)には、「まとめ」的なことは一切しません。

 生徒がいかに生き生きと活躍するかを最重視するため、教委や管理職に対して「文句があるなら私の授業が分かりやすいかつまらないか、わかるかわからないか、力がついたかついてないか、生徒に聞いてみなさい」という間接的なアピールを続けているわけですが、もしかするとそれが今回のことに関係があるのかもしれません。

 

 私みたいな「すれた教師」なら、それなりの「抵抗」もできますが、「業務命令」と言われたらほとんどの教師はビビッて言いなりになることでしょう。これも、学力テストをもとにした「教職員の管理統制」の一つの表れのように感じます。ほかにもそのような事例がたくさん表れているかも、と考えるのは杞憂でしょうか? (中学校 K)

えっ、私が英語を教えるの?

信じられない!今の学校現場でおこっていること


  

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 四日市市内の小学校で非常勤講師をしているTさん、4月5日に赴任校に行ったら机の上に6年生の英語の教科書が置いてあります。「えっ、私が英語を教えるの?聞いてないです。」「いえいえ、T先生はベテランで、何でもできると伺っています。」
40年間英語知らずの私が英語の専科教員?

 

 そんなやりとりのあと、不本意ながら英語専科を受け持つことに。しかし40年間英語なんて全く無縁の生活をしてきたTさん、「そもそも小学校の英語で、何をどこまで教えるの?教材は?到達目標は?評価は?」教頭に聞いたら「みんなわからないんですよ、チャレンジです。」「・・・・・」それにしても非常勤の私にさせるのはひどすぎる、そんな言葉を呑み込んで英語の教科書を家に持ち帰りました。

 「私がシロウトだからって、子どもが犠牲になってはかわいそう」。教師という仕事が大好きなTさんは持ち前の真面目さを発揮して猛勉強を開始します。市の広報で見つけた英会話講座に通い、インターネットで教え方を研修、Eテレの英語番組は幼・小・中すべて録画、それらを復習するために10連休は朝から晩まで英語漬けだったと言います。「たまねぎはオニオン、でも本当の発音はアニョンに近い。コアラはコゥアーラ。」そんなことを発音記号で調べて、教科書に書き込んでいきました。

 

 話を聞いているうちに、3年前に教育ネット教研集会で聞いた江利川先生(和歌山大学)のことばを思い出しました。「小学校英語なんて百害あって一利なし、英語の専門家でもない政治家に思いつきで教育行政をしてもらいたくない」

 

 財界からの要求を背景に強引に持ち込まれた小学校英語、いま全国の小学校で先生たちが困っています。どういう校内事情があったのかはわかりませんが、立場の弱い非常勤講師がそのしわよせを受けている。そんな中で健気にがんばっているTさん、頭が下がる思いでお話を聞きました。  (よ)