私が教師になったとき、学テ反対闘争という大きな闘いがあったと先輩の先生方に聞きました。それが今は、希望して申請して学テを受ける時代となっているとは隔世の感です。
子どもたちと向かい合っている私たちは、すべての子どもに豊かな学力をつけたいと願うのは当たり前です。どの子にもちゃんと学力をつけてあげられただろうかと客観的に見つめていくことも必要です。なぜそれが、国が出す「全国一斉の学力テスト」なのでしょうか?「地方分権」とうたい、学校の自主的な教育課程つくりも認められているのに・・。
全国的な数値を見るのが目的に他なりません。数値は県単位でなく、市町単位となり学校単位となります。それがどういう方向にいくのでしょうか。
「学力テスト」ならいいじゃないかと言う人もいますが、目の前で半日子どもたちにそのテストをさせてみたら分かります。全国で1万人を越える子どもたちが0点。半日一問も解けずずっと座っています。つまり、そんな問題なのです。進学塾へ行っている子には慣れた問題なのですが、分量は多く、B問題はふだん勉強している教科書と離れた応用問題ばかりです。賛成の人も反対の人も、一度、学力テストを手にとってみてほしいと思います。
学力格差が問題となってきました。経済的な格差もあります。一人親の家庭は母親が3つの仕事をかかえているため、子どもは寝るまで一人で過ごします。小さいときから本を読んでもらったり、宿題を見てもらったりすることが充分にできない状態です。高校や大学への進学をあきらめなければならない子たちの中には、勉強に意欲がわかないこともあります。行政の仕事は、学力を測ることでなく、生活保障をしていくこと。それが豊かな学力保証につながると思います。
今回、三重県教委は「学力の定着・向上にかかる取り組み」を出しました。学テを受ける学校には加配教員をつける、でもつかないかもしれない・・・とにかく「希望しろ」ということでしょうか。踏み絵のようにみんながそろって同じ方向に進みそうです。
「成果を報告する」とあります。学力テストの数値を上げろということが「成果」になります。国が用意した学力テスト用の勉強に追い込まれていきそうです。「学力向上アドバイザー」が学校に入ります。学校運営や授業に「指導」が入り、監視されながら教育活動が進みはしないかと危惧します。(小学校・K)