学力をつけるのなら、テストではなく授業でしょ?
「みえスタディ・チェック」をめぐって、6月16日、三重県教育委員会の担当者から説明を聞きました。大変熱心に取り組んでおられることは伝わってきましたが、肝心の所で、腑に落ちないところがありました。
その1
県教委は、「主体的な学び」「活用力の育成」が目的だと言いました。ところが、「教師の負担増を少しでも減らさなければならないので、事務処理を後に回すこと(夏休みに採点するのもOK)もありうる。」とも言いました。
それでは今問題になっている「全国学テ」と同じで、時間がたってから返ってくるテストでは子どもの主体的な学びは育たないでしょう。少しでも良心的になれば、超多忙な学期末に、過労に陥りながら採点することになってしまいます。
その2
県教委は、その一方で「教師の関わりなしに子どもの意欲は高まらない。」と言いました。まさにその通りで大変重要なポイントです。
しかし、この「みえスタディー・チェック」では、肝心のテスト作成に教師は「関わる」ことはなく、県教委が作った「活用力育成を狙った」問題がパソコンに送られてくるのです。子どもの実態を知っている教師が作ったテストではなく、県教委が一般論で作ったテストが、その「教師の関わり」を超える教育的効果を持ったものになるでしょうか。
しかも中学校では期末テストの直後です。子どもたちの多くは、「またテスト?もういやだ。」と感じるのではないでしょうか。
その3
県教委は、「良い問題なので、子どもの意欲が高まり、活用力が育つ。だから、スタディー・チェックが必要だ。」「期末考査として使うことも想定できる。問題が漏れるとよくないから実施日をそろえるべきという声もある。」とも言いました。それは、発想が根本的に間違っているのではないでしょうか。
なぜなら、「主体性や活用力の育成だけが目的で『全国学テ』対策ではありません。」と言うなら、仮にテストの時期が違っていて問題が他校の子どもに漏れたとしても、子どもたちがその問題に取り組む中で、「ああこんな風に考えていけばいいのか」と気づけば、それで充分なはずです。
ですからそんなに自信がある良問であるなら、それを各校に「自由にお使い下さい。」と配布すればいいのです。各教師がその問題に値打ちがあると判断すれば、それを授業に合わせた形に改善して授業の中で活用するでしょう。それこそが「教師の関わり」であり、教材の自主編成権の保障ではないでしょうか。
その4
次に問題になるのが、県教委にテスト結果を報告させることです。県教委は、「設問ごとに、県全体では何%の子どもが正解かを集計し、類型によってワークシートに反映させたい。」「各校が、結果を学校評議員さん等に報告することは、『学力向上県民運動』の立場からは十分ありうる。」「公開を前提としていないが、場合により公開も否定はできない。」と言いました。こうなると、もはや「全国学テ」と何もかわらないのではないでしょうか。
改めて詳しくは書きませんが、「競争主義」と「教師の管理統制」につながるという全く同じ問題点を抱えていることになります。
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今後、各職場でさまざまな議論が行われることと思います。「子どもたちのため」と思ってやったことが、実は子どもたちを苦しめるものになっては何にもなりません。逆に、子どもたちのためにならないと思いながらも、しぶしぶやるのは教師たるものの倫理に反します。この問題、県教委とさらに話し合う必要を感じました。(駒)