みえ教育ネットワーク

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みえ教育ネットワークの学テ問題分析 1

〜みえ教育ネットワークの学テ問題分析・その1(小学校理科)〜
 2012年4月17日に全国一斉学力テスト(6回目)が行われました。3割の抽出調査だったはずですが、「学力向上」のかけ声のもと、、三重県では99.3%(全国では81.2%)の学校が参加しました。私たちは「学力テストは競争をあおるだけで学力向上に役立たない」と批判してきました(過去の記事をご覧ください)が、このテストは「テストの中身」も疑問だらけです。以下、シリーズでお知らせしていきます。いっしょに問題を解きながら、考えてみてください。まず、小学校理科です。なお学力テストの問題・解答例・解説は国立教育政策研究所のホームページhttp://www.nier.go.jp/12chousa/12mondai.htm に出ています。

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 理科は45分で5つの大問に答えるようになっているが、理科の基礎基本が身についているかどうかというよりも、設問の意味を正しく読み取り、がまん強く思考する力を見るものになっている。

 一例としての問題を解いてみてほしい。こんな複雑な問題を出す意図はどこにあるのだろうか。<出題の趣旨>では
「方位磁針を適切に操作することで,日陰の位置の変化と太陽の動きの関係について捉え,日陰の位置及び様子について観察記録などから分析できるかどうかをみる。」
「天気の様子と気温の変化とを関係付けて,グラフなどのデータから分析できるかどうかをみる。」となっているが、全問に正解するのは大人でも難しいのではないか。分からない問題でも最後まであきらめずにがんばる子が「期待」されているのだろうか。しかしそれは「理科」的なものの見方や考え方を育てることと違うのではないか。子どもたちがテストをしている時の様子は見ていないが、うんざりした顔が思い浮かんでくる。   (O)

<問題例> 小学校理科
三郎さんは,5 月20日の1日の太陽の位置と木のかげの動きや長さを調べました。下の3枚の図はその時のようすです。


(1)午後1時の太陽の方位を,正しく調べているのはどれですか。下の1から4 までの中から1つ選んで,その番号を書きましょう。また,その時の太陽の方位を書きましょう。

こたえ 番号(    ) 方位(     ) 
(2)(1)で使った方位を調べる道具の名前を書きましょう。
    こたえ(            )

(3) 三郎さんは,右のように観察記録をまとめました。この日の木のかげの長さの変化をまとめたグラフはどれですか。下の1 から4 までの中から1 つ選んで,その番号を書きましょう。   



こたえ(       )


(4) 三郎さんは,同じ日の午前11時の空のようすを,写真にとりました。午前10 時から正午前までは,木のかげがなかったことから考えると,三郎さんがとった写真はどれですか。下の1 から4 までの中から1つ選んで,その番号を書きましょう。        

 
     こたえ(      )


(5)三郎さんは,同じ日に気温をはかりました。
この日のかげのようすから1日の天気を考えると,気温の変化を表したグラフはどれですか。下の1 から4 までの中から1つ選んで,その番号を書きましょう。また,その番号を選んだわけを書きましょう。


 こたえ 番号(   )
     理由


ちなみに正解は(1)1 南西 (2)方位磁針(方位磁石、コンパス)  (3)2  (4)3  (5)4 
(5)の理由 (例) 午前10時から正午前まではくもっていたので気温はあまり変わらないが,それ以外の時間は晴れていたので気温は上がるから。
   
以上、代表例としてをとりあげたが、そのほかの問題にも簡単に触れておく。

では、質量保存の法則を理解しているかどうかをみるのに、(1)は必要ない(形が変わっても確かに質量は保存されるということが言いたいのだろうが、(2)の問いで十分である)。

 溶けるという概念を理解しているかどうかをみるのに、(4)は必要ない(砂糖だけではなく梅のエキスも溶けており、子どもたちは混乱する)。

の(1)は実験方法を問うもので、理科の基礎基本とはいえない。

(2)(3)は、サクラの様子の違いと気温の関係を問う設問だが、地域によるサクラの生長のずれは、社会科で地域による気候の違いを学習する時(切実な課題を解決する時)に、理科で学習した内容と関連づけて気温の違いに気づかせた方が、より理科で学習した内容が定着するものと考えられる。この問題では、頭の中で組み立てた思考を問うだけのものになっている。

(5)は、問題を複雑にし子どもの頭を混乱させるだけのもの。問うならば、「いつ袋をかぶせるか」または、「つぼみのうちに袋をかぶせるのは、なぜか」と問うべき。

は、実際に実験してこそ意味がある。机上の実験だけで、こんなことを問うのは、科学的な思考とは無縁である。学習場面で子どもたちの考えを尊重し、試行錯誤させ、その中で子どもたちが自然の決まりや法則性を見つけられるような授業こそ大切なのだ。現状では、この設問にあるような活動をする時間は保障されていない。