みえ教育ネットワーク

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大津市でおきた中学2年生いじめ自殺事件をめぐって

 昨年11月に大津市でおきた中学2年生いじめ自殺事件をめぐって、さまざまな報道がされるものの、まだ事件の全体像は明らかになっていません。そんな中、ネット上では関係者の実名や写真まで掲載されるなどの常軌を逸した書き込みが見られます。一人の生徒が自ら命を絶ったというできごとは、教育に携わるものとして、重く受けとめなければならないことです。

 8月2日、全日本教職員組合がアピール「子どもたちのいのちを守り、人間として大切にされる学校づくりをすすめましょう 〜大津 中学校2年生の自殺事件に関わって〜」を発表しました

 アピールでは「子どもたちがもがき、苦しむような事態が起きているとき、教職員には、子どもたちの声に耳を傾け、その思いをていねいに聴き、その言動の背景にあるものをしっかりとつかむことが求められます。とりわけ『いじめ』や暴力などで追いつめられている子どもたちは、毎日恐怖にさらされ、本当のことが言えない状況におかれています。表面的なところだけを見るのではなく、内面に寄り添って聴き取ることが大切です。」と指摘しています。また問題解決には「子どもの現状や課題を率直に論議し、協力してとりくめる教職員集団の存在が不可欠」と述べ、それを困難にしている条件の一つに「日本の貧困な教育条件や子どもを大切にしない教育政策がある」と指摘しています。以下アピール全文を紹介します。

<アピール>
子どもたちのいのちを守り、人間として大切にされる学校づくりをすすめましょう 〜大津 中学校2年生の自殺事件に関わって〜
2012.8.2
全日本教職員組合中央執行委員会

 いじめを受けていたとされる滋賀県大津市の中学校2年生(当時)の自殺事件にあたり、亡くなった中学生とご遺族の皆さんに心からの哀悼の意を表明します。子どものいのちは、何よりも大切にされなければなりません。いのちをはぐくむ学校が、子どもたちのいのちを守れなかったことに、全教は、教育に直接携わる教職員で構成する全国組織として、痛恨の思いを抱いています。

 この事件に心を痛める国民の皆さんから、「なぜ学校で、こうした事態が繰り返されるのか」「どうすれば孤立し苦しむ子どもたちを救うことができるのか」などの問いが広がっています。全教は、二度とこうした悲しい事態を起こさないために、もう一度教育の原点に立ち返り、子どもたちのいのちを守り、子どもたちが人間として大切にされる学校づくりをすすめることを教職員、父母、国民のみなさんによびかけます。

1.学校は何よりも子どものいのちと人権を大切にするところ
 今回の事態について、学校が本来持っているべき教育的機能をなぜ発揮できなかったのかが問われています。一人ひとりの子どものいのちや人権を守るという立場に立ちきったとりくみがなされたかどうか、検証されなければなりません。

 子どもたちがもがき、苦しむような事態が起きているとき、教職員には、子どもたちの声に耳を傾け、その思いをていねいに聴き、その言動の背景にあるものをしっかりとつかむことが求められます。とりわけ「いじめ」や暴力などで追いつめられている子どもたちは、毎日恐怖にさらされ、本当のことが言えない状況におかれています。表面的なところだけを見るのではなく、内面に寄り添って聴き取ることが大切です。

 そして、受けとめた子どもたちの現実を学年や学校全体の教職員で共有し、子どもたちの願いと力を引き出し、子どもたちの成長の中で問題解決の方向をさぐっていくことが必要です。そのためには、子どもの現状や課題を率直に論議し、協力してとりくめる教職員集団の存在が不可欠です。一人ひとりの教職員の共同のとりくみのあり方が問われています。同時に、学校と保護者が信頼し合い、問題解決に向けたとりくみをすすめていくことが求められます。保護者の皆さんをはじめ、子どもたちの育ちに関わるすべての皆さんに協力を求め、問題解決にあたっていくことも必要になってきます。

 「いじめ」問題を克服する力は、子どもや教育の中にこそあります。教育委員会は、学校のとりくみを励まし、教育条件を整える立場に立たなければなりません。また、子どもの人権をないがしろにするような捜査のあり方や一方的な厳罰化では、事態の根本的な解決は望めません。教育関係者の共同による教育的な粘り強い営みが必要だと考えます。マスコミ報道のあり方も問われています。

2.子どもに向き合うことを励ます教育政策を
 一方で、「いじめ」問題の克服を困難にしている要因の一つに、日本の貧困な教育条件や子どもを大切にしない教育政策があります。

 依然として小中学校の学級定員は、小学校1,2年生を除いて40人のままです。学力テスト体制の中で、子どもたちは、日常的にテストの点数の高い低いで自分が評価されると感じさせられています。子どもたちは、「効率のよさ」や「成果」のみが評価され、人を人として大切にしない「自己責任論」がまかり通る社会の中で、本当の自分をさらけ出すことができず、多大なストレスを抱えています。

 子どもたちの思いに教職員や保護者などまわりの大人がていねいに寄り添うことが必要なのにもかかわらず、子どもたちを支えるべき学校や家庭をはじめ社会全体が、新自由主義的な「構造改革」路線のもとで、経済的、精神的、時間的ゆとりを奪われ、厳しい状況の中にあります。このような中で、教職員が子どもたちとじっくり向き合い保護者と力を合わせて、課題に立ち向かうためにも、長時間過密労働の解消や30人学級の実現・教職員定数増は急務です。全教は、全国の父母・教職員の皆さんとともに、子どもたちに寄り添える教育条件の整備を求めるとりくみをすすめていきます。

 2010年6月の第3回国連子どもの権利委員会最終所見が、「高度に競争主義的な学校環境が、・・・いじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退及び自殺の原因となること」に懸念を示し、「学校システム全体を見直すこと」を日本政府に勧告したように、今、日本の学校教育のあり方そのものが問われています。全教は、子どもの権利条約を生かし、子どもたちが人間として大切にされる学校づくり、子どもの権利委員会の最終所見にもとづく抜本的な教育政策の転換を求めたとりくみをすすめていきます。

3.子どもが人間として大切にされる学校と社会を
 わたしたちは、子どものいのちを守り、人間として大切にされる学校づくりをすすめていくためには、教職員が学校での共同のとりくみをすすめるとともに、子ども、保護者と真摯に向き合い、いじめや暴力のことを率直に語り合うことが大切だと考えています。

 学校は、子どもたちの成長、発達を保障する場です。一人ひとりの教職員は、目の前の子どもたちの実態から出発し、子どもたちの成長と発達を保障する教育実践をつくり出すために、日々奮闘しています。全国各地で、子どもたちが「できた」「わかった」ときに見せてくれる笑顔、「もっとできるようになりたい」と願う思いに寄り添った実践が積み重ねられてきました。

 教職員が職場での共同のとりくみをすすめ、父母・国民との教育対話を重ね、一つひとつの学校・地域から「参加と共同の学校づくり」をすすめていくことが求められています。

 すべての教育関係者の皆さん、今回の事件に心を痛めているすべての国民の皆さん、子どもたちがいのちを輝かせ、人間として大切にされる学校や地域、社会をつくるために、真摯に率直に語り合い、力を合わせていきましょう。