みえ教育ネットワーク

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大阪市内のマンションでで3歳と1歳の子を50日間放置して死に至らせた事件

 大阪2児放置死事件の背景に何があったのか

 まだ記憶に新しいところです。当時の新聞には「家に帰らず遊びまわる」・「育児放棄」・「無責任な母親」などという言葉が飛び交いました。しかし、この事件をもっと深いところから見つめたルポルタージュが最近(2013年9月)出版されました。毎日新聞10月25日付から引用します。
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 孤立し漂流する母子
「大きく日本社会が変容する。事件はその先駆けのように起きた」。ノンフィクションライターの杉山春さん(55)の著書「ルポ虐待・大阪二児置き去り死事件」(ちくま新書)の表紙に、こんな言葉が記されている。 

 ↑杉山春さん

  ネグレクト(育児放棄)という言葉が全国的に知られる契機となった愛知県武豊町の女児餓死事件(00年)を取材した経験を持つ杉山さん。10年後に起きた大阪の事件に、なぜ関心を持ったのか。

  「武豊町の事件は夫婦がいる家庭の中で起きたが、大阪のケースはそもそも『家庭』がない。子連れの母親が男性とくっついたり離れたり、居場所を転々とする中で起きる虐待が目につくようになり、この10年で何が起きているか知りたかったのです」

   事件の半月後、2児を放置した母親の受刑者(26)が幼少期から中学時代までを過ごした三重県四日市市に入った。学校関係者や同級生ら数十人に話を聞くなかで浮かんできたのは、強豪運動クラブを率いる高校教師の父と妹たちの父子家庭で育った受刑者の、孤独な少女時代だった。  

   小学校時代、妹たちの面倒をよく見ていた受刑者。父親はクラブ指導に力を入れるあまり、子どもには目が行き届かなかった。  
  「日本初の石油コンビナートが造られた四日市は全国に先駆けて近代化が進み、学校のランク付けも激しかった。全国大会出場は、勉強の苦手な子が社会に認められる『敗者復活』。受刑者の父は、生徒や親、地域、学校の期待を一身に背負っていた」と杉山さんは語る。 

  勝つことが大事。負けは許されない。そんな価値観の中で育った受刑者の繊細な心のありかに目を向ける大人はいなかった。周囲に自分を良く見せるうそを頻繁につき、都合が悪くなると姿を消すようになったのは中学時代。杉山さんは「価値がないと居場所を失う社会のあり方が、将来の虐待の種をまいたのでは」とみる。

 ※参考資料
 大阪2児放置死事件
 大阪市西区のマンションで2010年7月、当時3歳の姉と1歳の弟の遺体が見つかった。母親で元風俗店従業員の受刑者が逮捕・起訴され、今年3月に殺人罪で懲役30年が確定した。1、2審判決によると、受刑者は離婚後に水商売をしながら育児していたが、部屋に子を置いて遊びに出るようになり、最後は50日間姉弟を放置した。

 愛知・武豊町女児餓死事件
 00年12月、当時3歳の女児が餓死した事件。ともに21歳の両親が逮捕・起訴され、殺人罪で懲役7年が確定した。両親は死亡の約1ヵ月前から、女児を段ボールに入れて十分な食事を与えなかった。地域の保健師がネグレクトを疑い家庭訪問していたが、事件を防げなかった。

自尊心育む教育を
 ルポは、性や結婚に対する考え方が変化してきたことにも着目した。受刑者は「早くママになりたい」と、19歳で妊娠して結婚。離婚の際は親族会議を1度開いただけで、翌日には元夫と2人で役所に届けを出しに行った。結婚や離婚に踏み切るまでの意識の「軽さ」が感じられる。

  国勢調査によると、祖父母などと同居しておらず、母子のみで構成する母子家庭は1995年から2010年までの15年で約23万件増えた。「性のあり方が変わると家族の形も変わる。雇用の流動化も加わり、人間関係が固定しない『漂流する母子』が現れた」と、杉山さんは指摘する。

  周囲からの孤立を深め、SOSを出せずに虐待に向かってしまう母親。背景に「自尊心のなさがある」と杉山さんは推測する。自分が「社会から救われる存在」だと思うことができず、家の中の窮状を隠してしまい、子どもがその陰に埋もれてしまうという。 

  貧困家庭の子どもの支援もしている杉山さんは「中学時代の受刑者を思わせる子どもたちもたくさんいる。どう光を当てるかが課題だ。自分に価値があると思える教育が必要ではないか」と訴える。
                         (以上、10/25「毎日新聞」より)
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  みえ教育ネットワークは、杉山春さんを迎えて講演会を行ないます。来年2014年2月9日(土)10:30〜津市河芸公民館研修室(河芸町民の森)。くわしくは次回・・・。