昨年末、文科省が従来の方針を転換し、学力テストの学校別平均点公表を容認する姿勢を示しました。実際に公表されれば、現場には重大な影響が出ること必至です。しかし、三重県内の多くの市町は公表しない方針であることがわかりました。以下読売新聞から引用します。
【読売新聞4月23日付けより引用】
学力テスト「結果公表せず」23市町
「序列化招く」「個人特定」
22日に実施された「全国学力・学習状況調査」(全国学カテスト)の結果公表について、県内29市町のうち23市町が「学校の序列化を招く」などとして、公表しない方針であることが読売新聞の調べでわかった。
県教委と市町教委に対して、個々の学校名を明らかにした結果の公表を行う予定があるかどうか、アンケート方式の調査を実施した。
その結果、公表に対しては「実態を把握し改善に生かす本来の目的が薄れ、競争や序列化につながる恐れがある」(伊勢市教委)、「テスト対策に偏った授業になる」(桑名市教委)、「テストの結果だけで学校間の学力差と捉えられ、比較されることのデメリットが大きい」 (明和町教委)などと懸念する声が大勢を占めた。
中には、「国の公表に対する考えが変化したことに疑問を感じる」(志摩市教委)という意見もあった。
小規模校が多く、中学3年生が1人の学校もあるという熊野市など5市町教委は、「個人が特定される」ことを理由に公表を控えると回答した。
県内で唯一、公表する予定と回答したのは度会町教委。町内に小中学校が各1校しかなく、テストの結果を踏まえた授業の改善策とともに平均正答率を町のホームページなどで公表していく方針という。
津市、多気、紀北、御浜、紀宝町の教委は検討中としている。
県教委は、市町別の平均点などの公表について今後、市町教委と協議した上で結論を出したいとしている。
鈴木英敬知事は22日、結果公表について「家庭や地域と情報を共有することにより、それぞれの役割を確認し、学力向上への取り組みが促進されることや教育環境の向上につながると考える。県教委において前向きな調整を行っていただきたい」とコメントを発表。県教委の山口千代己教育長は「学力向上に向け、より有効な方法となるよう市町教委と連携を取りながら検討を進める」とした。 【以上、引用終わり】
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文科省の方針転換にもかかわらず、三重県内の市町教育委員会の多くは、学校別の点数公表が何の得策にもならないことを見抜いています。今後「なぜ公表しないのか」との政治的な圧力が強まる可能性がありますが、教育の中立性・継続性・安定性を守るための機関として行政からは独立して設置されている教育委員会が、役割を発揮することを期待します。
この記事では県教委の姿勢はわかりにくいですが、同日の中日新聞は「山口千代巳教育長は『学校別成績の公表は、市町の教委と連携しながら検討する』とコメント。鈴木英敬知事は『県教委で公表を前向きに調整してほしい』と要望した」と、書いています。県教委が「市町の教委と連携」するというなら、市町教委の大半が反対する「公表」などできない相談です。いくら知事が「前向きに調整してほしい」などと言っても、県教委には独自性を発揮してもらいたいものです。