リニア導入は、国家１００年の愚策
台風１１号の大雨のさなか、リニア新幹線の予定駅である亀山で、橋山禮治郎さんの講演を聞いてきました。帰りは、大水で、ひやひやの運転でしたが………。
橋山さんは、現在７４歳、政治家ではなく、日本開発銀行理事、大平内閣の参事、運輸政策審議会などの委員を務めた経済人であり、その発言には、重みがあります。
リニア新幹線ができたら、わざわざ１時間１本（当初の予定）の亀山（予定駅）まで行って、東京や大阪に出かける人が、どれほどいるでしょうか？ほとんどの方は、在来のバスや電車あるいは、自家用車を利用するのではないでしょうか。
ＪＲ東海が「我が社が建設する」と言い出し、間もなく着工の声まで上がっています。このリニア中央新幹線が、とんでもない問題をかかえているのをご存じでしょうか。
収支は、大幅の赤字は必至
工事費は、９兆円の予定。しかし、最近の資材高騰や長期金利の上昇から、かなりの増額は予測可能です。これに乗る乗客といえば、現在の東海道新幹線のお客がリニアに乗ることになり、ＪＲ東海にとって、特別に乗客が増えることにはなりません。しかも、完成予定の２０５０年頃には、日本の人口が今より、３０００万人も減少しているのです。よく乗るであろう働き盛りの人口が減ってしまうのです。
深夜の高速バスを利用して、運賃を節約している人がかなりいる現在、少し速いからと運賃の高いリニアよりも現在の「のぞみ」などを利用する人の方が多いことでしょう。
東京・名古屋間４０分、東京・大阪間６７分のリニア新幹線。速いといっても、フランスが普通の鉄道で、時速５７５kmを、中国が４８６kmを記録しており、５００kmをめざすのに、リニアにこだわる必要は、全くありません。
聡明なドイツは、すでに、１４年前にリニアの建設を断念しているのです。ドイツは、着工前に事前評価をし、連邦議会が中止させたのです。今回のメルケル首相の原発廃止など見習うことが多い国だと思います。
赤字となれば、ＪＲ東海だけの問題ですまされません。公共性を考えれば、国が援助することになることでしょう。福島原発がその例を示しています。
大赤字をもたらしている東京湾横断道路（アクアライン）、関西国際空港、長良川河口堰、本四架橋、などの二の舞いになることが見えています。赤字とは、貸し付けている大銀行が太り、国民の借金の国債がどんどん増えることを意味しています。
日本人一人当たり、７９２万円の借金が、益々増え、日本の国債が破綻したら、………考えただけでも恐ろしい話です。
危険なリニア
ほとんどトンネルのリニアで、事故が起きたら、どうなるのでしょうか。途中に縦坑を掘り、そこから上に４０ｍエレベーター（？）で少しずつ避難することになると言うのです。
南アルプスを貫通するトンネル工事では、地下水や地盤などに、不安材料がいっぱいです。その工事には、かなりの困難が予想されています。地元の飲料水にも影響すると言われています。
また電磁波が人体に与える問題も心配ですし、クレジットカードの磁気がおかしくなるから、鉛の箱に入れるという話を俵孝太郎氏の経済関係の本で読んだことがあります。上海のリニアでは、鉄道周辺の住民が電磁波を恐れて、建設阻止を起こしたことがあるそうです。
すごく電力を食うので、すべてのリニアが走行した場合、原発３基分の電力が必要とされています。エコに向かっている現在の世相と相反することになります。
第２名神高速道路や新東名などのように、バイパス的に、リニア新幹線が必要だと言う人がいます。現在の新幹線の老朽化や予想されている大震災に備えて建設をという訳です。しかし、現在の新幹線の座席利用率が、２０１２年で、６２％なのです。また、大震災では、リニアは、必要な物資輸送などには、利用できません。建設するなら、アクセスの利便性のある普通の鉄道の新幹線であるべきだと橋山さんは言われます。
このまま突き進めば、大赤字が見えているリニア中央新幹線、ドイツのように、即廃止すべきだと思うのですが、みなさんは、どうお考えでしょうか。（Ｙ＆Ａ）
詳しく知りたい方は、橋山禮治郎さんの著書を是非お読み下さい。
『リニア新幹線 巨大プロジェクトの真実』 集英社新書 ７７８円（税込み）
