みえ教育ネットワーク

「 みえ 教育 ネットワーク 」は 三重県に勤務する、教育に関わる 全ての 職種 (正規・非正規 とも)、誰でも一人から入ることができる労働組合です。無料ブログのため、CMが入りますが、ご了承ください! ホームページは https://menwtuhp.jimdofree.com/ にあります。                 

「1年単位の変形労働時間制」やめて!

三重県議会 1年単位の変形労働時間制 可決

 2021年12月23日(木)三重県議会において教職員に対して「1年単位の変形労働時間制」を導入するための条例改正案が可決されました。

 

 みえ教育ネットは、県教委交渉などで「教員にいっそうの長時間労働をもたらすだけであり、そのような制度の導入を現場は求めていない」として、くりかえし反対を表明してきました。

11月に行った14市教委との懇談でも

「採用するかどうか検討中。学校現場が希望しているとは言えない。平日1時間延びることが適切かどうか。メリットがあるかないかわからない。今やるべきことは閉庁日をもうけて、年休を取りやすくすることだ。」    (A市)

 

f:id:mie_net:20211226141347p:plain


「県が条例改正した後、市町が条例改正になると思うが、6:00まで拘束されるこのやり方はバラ色には見えない。現場からそうしてくれとの希望はない。8月10日~16日まで学校閉庁なので休みはとれる。」  (B市)

 

「『6時まで勤務時間』とすれば時間外勤務は数字の上では減る しかし実態は変わらない。実態こそ変えなければならない。」  (C市)

 

「変形労働制は、働き方改革につながるのか疑問だ。超過勤務にお墨付きを与えるようなものだ。体を壊したらどうするのかと思う。」  (D市)

 

f:id:mie_net:20211226141439p:plain


「変形労働時間制は、慎重に対応していきたいと考えている。学校現場では、効果や期待などない。時間外労働は、数字のマジックで減るかもしれないが、実質的に過重労働が減るわけではないと考える。県や他地域の状況を見ながら、慎重に対応していく。」                                

                             (E市)

などと、慎重な意見が聞かれました。

 

 毎日新聞は全国的にはこの制度の導入には慎重な都道府県が多いと報じています。

f:id:mie_net:20211226135905p:plain

教員働き方改革 休暇まとめ取り「変形労働制」進まず 文科省調査  12/24(金) 11:59配信

 長時間労働が常態化している公立校教員の「働き方改革」を進めるため2021年度から導入できるようになった1年単位の「変形労働時間制」について、導入に必要な条例を20年度に整備したのは、47都道府県のうち9道県、20政令市では浜松市だけだった

 

 文部科学省が24日に発表した。条例の整備を予定している自治体まで含めても、21都道府県にとどまった。政令市では浜松市以外に整備予定の自治体はなかった。

 

 20年度の調査では、25都道府県と2市が前向きな姿勢を示していたが、この1年で導入の機運は後退した。変形労働時間制は、公立小中学校・高校の教員を対象に、年度当初などの忙しい時期の勤務時間を延ばす代わりに、夏休み期間などに休暇をまとめ取りするのを認める制度。

 

 文科省自治体が導入に慎重なのは、新型コロナウイルスの感染状況が見通せず、コロナ対応の業務がいつ急増するかも予測しにくいため、1年単位での労働時間の管理が難しい状況が続いているのが一因とみている。【大久保昂】

 

みえ教育ネットは23日の県議会を傍聴しましたが、残念ながら反対した議員さんはたった1名で、条例案は可決されてしまいました。

 三重県議会条例案が可決されたことを受けて、みえ教育ネットはさっそく各市町教委に対して導入しないよう求める請願書【下記】を提出しました。

 

***************************************************************

                           令和3年12月24日

各市町教育委員会教育長様

公立学校における「1年単位の変形労働時間制」の導入を行わないことを求める請願書

                    みえ教育ネットワーク教職員ユニオン

1 請願の要旨

 公立学校における「1年単位の変形労働時間制」の導入を行わないことを求めます。日本国憲法第16 条および請願法に基づき、請願いたします。

 

2 請願の理由

 令和3年12月23日に三重県議会において、「公立学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部 を改正する条例案」が採択されました。このことにより、三重県立学校においては教職員に対して「1年 単位の変形労働時間制」を適用することができるようになりました。このことを受けて、貴教育委員会におかれましても管内公立学校教職員に対して同制度が適用できるように条例整備を進めていくお考えがあるのかもしれません。

 しかし、「1年単位の変形労働時間制」の導入は以下に示すように、教職員への 負担のさらなる増大のみならず、学校運営上支障があるものであることから、導入を避けるべきであると考えます。

 

(1) 教職員の負担のさらなる増大

 文部科学省は「1年単位の変形労働時間制」の導入の前提条件として「対象となる教育職員の在校等時間が1か月で42時間、1年で320時間までであること」「服務監督教育委員会及び校長は指針に定める全ての措置を講じること」等を示しています。

 しかし、三重県内の公立学校においては教職員の在校等時間が統計上は減少しているようであっても、実際のところは持ち帰り仕事が増えているだけであるとか、在校等時間の記録内容が実際とは異なるものになっているとかいった声を聞くことが珍しくありま せん。また、当組合の調査では、長期休暇以外の期間における在校等時間が少なくないことがわかっています。  

 このように、本制度を導入するための前提が整っていないのが現状であると考えます。

 本制度は休日のまとめ取りを目的とした制度であり、長時間労働の是正を目的としたものではないことは承知していますが、教職員の長時間労働が見かけ上は少なく計上されることになります。

 これでは深刻な問題となっている教職員の長時間労働に拍車がかかり、心身に不調をきたす教職員のさらなる増加に繋がることが危惧されます。「休日のまとめ取り」であれば、そのような制度を導入しなくても、年次有給休暇を多く取得することで同じ目的を達成することが可能であり、本制度を導入する必要性はないと考えます。

 

(2) 学校運営上の支障

 この制度は「一度決めた勤務時間は変更することができない」という性質を有しています。したがって、後から週休日変更や勤務時間の割振り変更を行うことはできません。

 そのため、たとえば

土曜日に開催予定の屋外開催の学校行事は雨天であっても(勤務日とはされていない)日曜日に順延するということができない

緊急性のある児童生徒指導案件は規定勤務終了時刻後も行う必要があるが、超過勤務時間分の割振り変更を行うことができない

といった重大な問題点があり、この制度がそもそも学校現 場には馴染まないということを示しています。

 また、勤務時間は1日あたり最大10時間までに設定することが原則ですが、修学旅行の引率等、この限度時間を超えなければ運用できない業務が存在します。

 民間企業であれば、限度時間を超えた分については割増賃金の支払いによって超過勤務をさせることが 可能ですが、原則的に超過勤務をさせることができないとされている公立学校教員については規定時間を超えて業務をさせることができません。

 こうしたことから、「1年単位の変形労働時間制」の導入は学 校運営上、かなりの問題があると考えます。

***************************************************************************

 現行制度下でも本来であれば、あらゆる業務について日常的に勤務時間の割振り変更が行われる必要 がありますが、まるで「規定勤務時間外はすべて自発的勤務である」というような法令に反した運用が行 われていることが珍しくありません。

 

 労働基準法第109条に基づき、勤務時間の記録・保存の義務があると考えますが、勤務時間記録の一部である勤務時間の割振り変更については「勤務時間の割振り変更簿」等を用いての記録・保存がされていないのではないでしょうか。

 このように現行制度下であっても勤務時間管理が不適切であると感じます。法の定めを守らないことが常態化している学校現場において、 「1年単位の変形労働時間制」という問題点の多い制度を導入されたら、さらに不適切な運用が行われるのではないかと危惧します。

 「1年単位の変形労働時間制」にはこれまで述べたように、教職員の負担のさらなる増大や学校運営上 の支障に繋がるという重大な問題を含んでいることからも、学校現場への導入は行わないようにしていただきたく思います

**************************************************************************

最後に、ある現場教員の率直な声を紹介します。

 

f:id:mie_net:20211226142618p:plain


まったく的はずれな制度すぎて、現場の評判が悪いだけ。もともと有給休暇なんてほぼ夏休みに
しか使えないのにそれが潰され、しかも長時間労働に堂々とお墨付きを与える。現場の状況を知ってたら絶対にこんな制度考えないよ。

                              (以上 吉田)